建築鉄骨構造技術支援協会(SASST)  
 
Q

4-32 庇ガセットプレートの溶接方法

 工場及び倉庫の工事で、庇の吊り材と取合うガセットプレートを完全溶込み溶接で施工するよう要求されました。構造設計者の話では,引張力がかかるので完全溶込み溶接で・・・とのことですが、引張力がかかるガセットプレートは全て完全溶込みとする必要があるのでしょうか。隅肉溶接で施工するとして、ガセットプレートの板厚アップ、隅肉サイズの確保など、構造設計者が納得する提案方法を教えてください。

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A

 引張力が生じるガセットプレート端を全て完全溶込み溶接する必要はありません。隅肉溶接とすることが可能です。以下に、ガセットプレート溶接接合部に関する構造検討例を示します。

【ガセットプレート溶接接合部 検討例 】
 ブレースに用いる鋼管の断面は
○-139.8×6.6(断面積A = 27.62cm2)であり,鋼種はSTK400である.ブレースの柱に対する角度は71°である。ガセットプレートの鋼種はSS400であり,板厚は9mmである。隅肉溶接サイズは9mmであり,ガセットプレート端の鉛直方向の長さを継目全長として隅肉溶接する。


<許容応力度の検討>

安全側の仮定として,短期荷重がブレースの全断面降伏荷重であると想定する。

ブレース上側のガセットプレート隅肉溶接部について検討する。

第1ボルトから60度の範囲を隅肉溶接の有効長さとする。

隅肉溶接の有効長さ ℓ=190+(258-9)=439mm

隅肉溶接の有効面積(有効のど厚aの場合) 

鋼管の引張降伏耐力 N=A・F=27.62×23.5=649kN

溶接部に生じる応力度τの検定を行う。

 以上の検討からガセットプレート接合部について,完全溶込み溶接を用いた接合部ではなく,一般的な隅肉溶接サイズを用いた隅肉溶接接合部として余裕のある設計を行うことが十分可能であることが分かります。

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