建築鉄骨構造技術支援協会(SASST)  
 
Q

2-19 ロール発注が難しい場合の対策

 設計図において小梁H-125×60×6×8(SN400B)が数量100kgの場合,材料が市中にありません。ロール発注にしても数量が多くないため,不可と回答されました。この場合どのように対応すればよいでしょうか。

表1 部材位置

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A

 このサイズのH形鋼は,市中にはSS400のものしかありません。また,SN400Aならまだしも,SN400Bでロールチャンスのあるメーカーは存在しないと思われます。
 その理由は,フランジ幅が60mmではフランジの完全溶込み溶接や高力ボルト接合が実質的に不可能で,主要構造部材には適用できないからです。二次部材もしくは非構造部材としての用途であれば,鋼材の塑性変形能力や溶接性能は不要であり,SN400B材を用いる意味はありません。そのため,メーカーも需要のないものは製造していません。また,特別にロール発注しようとしても,メーカーとしては素材の手配からロールチャンスの設定まで考慮すると,よほどの量がないと採算が取れないので受けてもらえないでしょう。
 一方,本例の小梁のように弾性範囲で使われる部材に対してはSN400A材があります。この鋼材は,溶接性は保証されていないものの,C(炭素)含有量の上限が規定されているため,Cの規定のないSS400と比べると品質の高い鋼材です。しかし,本例のような小寸のH形鋼についてはそこまでの品質は求められないことが多いので,やはり材料は市中に存在せず,ロール発注も困難です。
 ご質問の件の対処方法としては,設計監理者と協議を行って上記のような事情を説明し,鋼種をSS400に変更してもらうしかないでしょう。

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