建築鉄骨構造技術支援協会(SASST)  
 
Q

2-15 H形鋼の裏サイズは入手難のものも多いですが、今後はなくなる流れはありますか

 SN材で設計図書に書かれている場合があり,スケジュール又はサイズ(特にせいが700を超えるもの)により,入手難があります。メーカーのカタログには記載がありますが,ロールスケジュールやメーカーが実行するロール投入重量などが分からないため,設計者が採用してしまいます。

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A

 JIS G 3192 : 2021「熱間圧延形鋼の形状,寸法,質量及びその許容差」の表15に、H形鋼の標準断面寸法等が規定されています。この表の注c) に「* 印の寸法は,汎用品以外を示す。」と記されており,これらのサイズは一般に「裏サイズ」と呼ばれます。一方,* 印のないサイズは「表サイズ」と呼ばれています。 例えば「400×200」のシリーズでは,H-396×199×7×11が裏サイズ,H-400×200×8×13が表サイズです。
 「表・裏」の名前の理由は不明です。ただ,H形鋼は内法寸法が一定になるユニバーサルロールで圧延されるので,切りのよい数値の汎用サイズのほかに,板厚を薄くして高さと幅が微妙に小さくなるサイズの製造も可能です。このことから,「裏技」的なイメージで「裏サイズ」と呼ばれるようになったと推測されます。
 板厚の薄い裏サイズのH形鋼は,表サイズと比べて単位質量当たりの断面係数が大きいため、鋼材量が削減できるという利点がありますが,幅厚比が大きいため変形能力が小さく,主架構の梁としては耐震設計上不利になるという欠点があります。このため,主として小梁等の弾性範囲で使用する部材に用いられています。
 鋼材メーカー側としては,裏サイズをやめて表サイズに統一できれば,製造ロットも上がり,在庫管理も合理化できます。しかし,現状では,コスト削減のために鋼材重量を少しでも減らすことを重視する設計者も多く,裏サイズの需要は根強いため,メーカー側も製造をやめることはないと考えられます。
 なお,主として弾性範囲で使われる裏サイズのH形鋼にはSS材やSM材が広く採用されているので,メーカーはSN材の裏サイズは製造していません。(例えば,JFEスチールのカタログには,裏サイズについて「* 印製造規格はSS材,SM材とします。」と注に明記しています。)
 設計図書に裏サイズにもSN材が指定されている場合,それが小梁や単純支持梁であれば構造設計上のSN材の必要性について質疑を上げ,SS材かSM材に替えてもらうように提案してはいかがでしょうか。また,梁せいが700mmを超えるような大型のJISサイズのH形鋼についてはSN材の外法一定H形鋼でも同等程度のサイズがあるのでこちらへの置き換えを提案するのも一案です。

H形鋼の圧延方法

※ 出典:日本製鉄株式会社:カタログ「H形鋼」 ©2019, 2022 NIPPON STEEL CORPORATION K004_04_202209f

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