建築鉄骨構造技術支援協会(SASST)  
 
Q

6-8 軽微な部材の脚部における樹脂アンカーボルトへの変更

 軽微な間柱、階段の脚部等のアンカーボルトを、設計図に記載されているアンカーボルト(例 M16, L=500) からあと施工の樹脂アンカーや打込みアンカーへの変更は可能でしょうか。可能な場合、変更要望質疑への記載はどのような言葉で記載すれば、承諾を得やすいでしょうか。

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A

 建築基準法施行令第66条に、以下のような記載があります。

第66条(柱の脚部)
  構造耐力上主要な部分である柱の脚部は、国土交通大臣が定める基準に従ったアンカーボルトによる緊結その他の構造方法により基礎に緊結しなければならない。ただし、滑節構造である場合においては、この限りでない。

 これに従えば、軽微な間柱は「構造耐力上主要な部分」(下記)ではないので、国土交通大臣が定める基準には従う必要はないことになります。したがって、樹脂アンカー等への変更は可能と思われます。

建築基準法施行令
第1条(用語の定義)
 三 構造耐力上主要な部分  基礎、基礎ぐい、壁、柱、小屋組、土台、斜材(筋かい、方づえ、火打材その他これらに類するものをいう。)、床版、屋根版又は横架材(はり、けたその他これらに類するものをいう。)で、建築物の自重若しくは積載荷重、積雪荷重、風圧、土圧若しくは水圧又は地震その他の震動若しくは衝撃を支えるものをいう。

 なお、別途施行令第82条の4に、以下の記述がありますので、外壁等を支える胴縁・間柱については、風圧に対し構造計算によって構造耐力上安全であることを確かめることが必要となります。

建築基準法施行令
第82条の4(屋根ふき材等の構造計算)
 屋根ふき材、外装材及び屋外に面する帳壁については、国土交通大臣が定める基準 に従った構造計算によって風圧に対して構造耐力上安全であることを確かめなければ ならない。

 そもそも論にはなりますが、建築基準法は「覊束裁量」(「法規裁量」とも言う、反意語は「自由裁量」または「便宜裁量」)で成り立つ法律です。覊束裁量とは、簡単に言えば「行政庁に判断の余地が与えられていないこと」を言います。法律の条文通りに法運用が行われなければならないということで、津々浦々日本中どこへ行っても、同じ法解釈が行われることが必要になります。そのためには、基準法は本来異なる解釈が起こらないように分かり易く記述されていることが大前提となります。

 覊束裁量という法の精神自体は、建築基準法の良い所だと思いますが、これを守るために多くの告示が必要となり、非常に複雑な法体系となっていることも否定できません。

例えば、

① ある地域では許されていることが別の地域に行くと認められない
② 以前まで認められていたことが、突然許されなくなる
③ 読み方により解釈が異なり結果としてどのように対処したら良いのかわからない

というようなことが生じると結果として多大な不利益を被る国民が生まれることになるので、本来あってはいけないことです。

 今回の質問は、③に該当するもののように思われますが、このようなことが、SASSTの鉄骨Q&Aで取り上げられること自体、建築基準法の在り方を見直す時期が来ているようにも思われ心配です。

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