建築鉄骨構造技術支援協会(SASST)  
 
Q

4-26 間柱ベースプレートのフルペネ溶接設計は

 H形鋼の間柱ベースプレートの溶接要領で、フランジが完全溶込み溶接、ウェブが隅肉溶接との記号指示があります。全周隅肉溶接で質疑を出すと、殆どNGとの回答が返ってきます。2-M16程度のアンカーの柱脚ですが、柱材とベースプレートとの溶接に強度を持たせる設計になっているのでしょうか。

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A

 この点については客先に質疑をして回答を求めることが原則です。

 間柱は、風荷重や地震力に対して仕上げ材を安全に支持するためのもので、通常、これらの作用荷重に対して間柱は過大な変形が生じないよう設計されます。このような場合、その柱脚に作用する荷重は、さほど大きなものではなく、ご指摘のように柱脚を固定するアンカーボルトは、2-M16程度の場合が多いと考えられます。このようなケースでは、間柱とベースプレートの溶接部は、サイズ6mm程度の隅肉溶接であっても設計荷重は十分負担できる場合が多いでしょう。

 このような溶接部に完全溶込み溶接を要求すると、柱の端部では開先加工が必要となり、超音波探傷が要求されることもあります。この部分を隅肉溶接とする場合に比べてかなりのコストアップに繋がる恐れがあります。

 構造設計者は、溶接接合部を保有耐力接合としておけば、構造上の問題は生じないし、特別な計算も要しないことから、完全溶込み溶接を選択しがちです。これは、日頃から多くの業務上の課題を抱える構造設計者としてはありがちなことですが、その結果としてコストアップとなれば、結果として建築主の不利益となります。

 このような場合の対応としては、実際にどの程度のコストアップに繋がるかを数値で示して、構造設計者に説明することが重要と考えます。このようなケースで、実際にどの程度のコストの差が生じるかを積算して、その結果を毎回示すことで構造設計者の理解を促す努力を重ねることが大切ではないかと考えます。

 尚、これに限らず、本来隅肉溶接で問題無いと思われる部位に、完全溶込み溶接を求める問題は、他項でも掲載されています。SASSTとしては、調査研究委員会を活用して、ファブリケータ側が設計サイドに隅肉溶接の有効性等を説明するための資料の整備を、今後進めて行きたいと考えています。

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