建築鉄骨構造技術支援協会(SASST)  
 
Q

4-2 不合格欠陥となるブローホールとは

 「ブローホールは溶接欠陥に入らない」と言う人がいますが、どのように受け止め、また規準的にはどう考えたらよいのでしょうか

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A

 ブローホールが溶接欠陥であるか否かの質問でありますが、ブローホールは溶接部に存在する不連続部として存在し、完全な溶接欠陥に該当します。

 一方、溶接欠陥を溶接部の継手性能に及ぼす影響に絞って定義した場合、図1に示しますブローホールの欠陥率と強度の関係からも明らかなように、欠陥率が10%以内にあり、健全な溶接部とほぼ同等の強度が得られる範囲では、ブローホールが溶接欠陥に当てはまらないことになります。ただ、欠陥率が10%を超え、健全な溶接部と比較して強度が著しく低下する範囲では、この定義においてもブローホールが溶接欠陥に該当することになります。したがって、通常の溶接施工においてブローホールの欠陥率が10%を超えることが少ないことから、「ブローホールは溶接欠陥に入らない」と言っているものと考えられます。

 継手性能に及ぼすブローホールの影響が小さいことは、ブローホールが球状、棒状の空隙欠陥であり、その表面形状が大きな曲率を有するものであり、応力集中(形状不連続部によって一様な応力に比べて高応力が発生する領域)が比較的小さいことに起因するものであります。因みに、ブローホールは溶接金属が溶融状態から凝固する際に、溶融金属に溶け込んだ気体成分、又は外部から侵入した気体成分が溶接金属内部に取り残されて生成するものであり、その形状は気体成分の圧力によって球状、棒状になります。

 溶接部に発生するブローホールの評価基準につきまして、鉄骨工事において溶接内部品質の評価に最も多用されている超音波探傷検査では、「日本建築学会 鋼構造建築溶接部の超音波探傷検査規準・同解説」に評価基準が定められております。当該規準では試験方法の特性からブローホールと他の溶接欠陥を区分することなく、それらを同種類の溶接欠陥として扱い、エコー高さ(欠陥の板厚方向の大きさを代用するもの)と欠陥評価長さ(溶接線方向の長さ)の積である欠陥の断面積を欠陥評価の管理値に定めております。この評価基準をブローホールに絞って考察しますと、比較的小さなブローホールが分散して存在する場合は、性能上適合しているとの判断(合格)であり、ブローホールを溶接欠陥と見なさないとの考え方に一致しております。また、溶接部の外観検査におけるブローホールの扱いについては、「日本建築学会 JASS 6」ではその一種であるピットを溶接長さ300mm当たり2個以下(限界許容差)に規定しております。

図1
図1 軟鋼溶接部のブローホールと静的強度

引用文献:石井勇五郎“溶接欠陥の程度の機械的強度に及ぼす影響”
溶接の非破壊検査による採否判定/昭和44年

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