建築鉄骨構造技術支援協会(SASST)  
 
Q

3-44 梁GPL等の位置決め溶接後, 本溶接でよいか

 一般的にタック溶接(位置決め溶接)で部材位置を固定し、そのタック溶接を被せるように、約40mmの組立て溶接を行い、その組立て溶接を被せるように本溶接を行います。

 タック溶接が少しでも残っていると、ショートビードだと指摘され、被せるように組立て溶接で補修を要求されます。このタック溶接は、部材の保持さえ出来れば、本溶接で被せられる溶接線上であるので問題ないと思いますが、いかがでしょうか。


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A

 位置決め溶接に関する研究があります1)、2)。この研究は、図1に示す試験体を用いて、溶接部の底部のビッカース硬さを測定しています(図2)。

溶接は、
 位置決め溶接のまま
 位置決め溶接+組立て溶接
 位置決め溶接+本溶接
 位置決め溶接+組立て溶接+本溶接
 本溶接のみ

とし、位置決め溶接の脚長(4, 6, 9mm)、初期鋼材温度(5, 30, 100℃)、位置決め溶接後の放置時間(1分, 1日, 5日)を実験変数としています。
 なお、位置決め溶接は炭酸ガス半自動溶接で行っています。


図1 試験体の形状

図2 硬さ測定位置

 図3に、ビッカース硬さ測定結果を示します。測定結果から、位置決め溶接の上に本溶接をした場合、位置決め溶接のままと比較してビッカース硬さが低くなることから位置決め溶接により硬化した熱影響部の硬さが大きく緩和されています。また、本溶接のみのビッカース硬さより低いため、位置決め溶接の上に本溶接をした場合は本溶接のみの場合と差異が少ないと観察されます。


図3 硬さ測定結果

 このようなことから、日本建築学会、鉄骨工事技術指針・工場製作編(2018年版)3)では、「位置決め溶接を行う場合、適切な溶接材料と溶接方法を選択し、再熱効果によって急冷された部分の硬さを緩和できるように、上から組立て溶接または本溶接を重ね、位置決め溶接が外観上残らないようにする。」としています。 従って、ご質問の回答としては、位置決め溶接の上から本溶接を行っても問題はないものと思われますが、位置決め溶接は割れやすいので、その上から組立て溶接を行う習慣をつけてほしいものと考えます。

[参考文献]

1)荒井聡、横山幸夫、松下眞治、関口秀樹、山田浩二:位置決め溶接部の硬さに及ぼす溶接熱履歴の影響(その1)〜(その3)、日本建築学会大会学術講演梗概集、pp.1167〜1168、2016.9、

2)荒井聡、宋勇勲、松下眞治、関口秀樹、山田浩二:位置決め溶接部の硬さに及ぼす溶接熱履歴の影響(その4)、日本建築学会大会学術講演梗概集、pp.997〜998、2017.9、

3)日本建築学会、鉄骨工事技術指針・工場製作編(2018年版)、pp.320〜321

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