建築鉄骨構造技術支援協会(SASST)  
 
Q

3-38 線膨張を考慮した梁加工は必要か

 2階建て約30tのビルタイプ公共物件で製品検査の時、役所の監督員に『製作に対して真夏の鉄骨の伸び量は加味していますか』と質問された事があります。その時は、わからないので加味していませんと答えました。

 どの程度の物件になるとその様な事が必要になりますか。

<<工事概要>>

・最大部材は、H-500x200x10x16  ・最大スパンは、10m

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A

 製品の温度差による長さの伸び量(e)は、(1)式で計算できます。

  e = T x L x D  ・・・・・・(1)

  ここで、T:線膨張係数鋼は 0.000012/℃

L:製品の長さ

D:温度差

<d>
 製作工場内の温度が真夏時、20℃を基準に35℃と高くなったとすると、長さ10mの梁の伸び量(e)は、(1)式を用いて、

  e = 0.000012/℃ x 10,000mm x (35℃-20℃) = 1.8mm

伸びることとなります。

 日本の鉄骨製作においては、温度変化によるこのような伸び・縮み量を考慮して製作に反映していることは少ないと思われますが、いずれにせよ、鉄骨の製品精度が、日本建築学会、建築工事標準仕様書JASS 6鉄骨工事、付則6.鉄骨精度検査基準の管理許容差(例えば、梁の長さ: -3mm ≦ ⊿ L ≦ + 3mm)を満足していれば問題ないものと思われます。
 橋梁分野の鋼橋では、伸縮継手(エキスパンションジョイント)の設置により季節の温度差による鋼橋の伸び・縮みの影響を処理しています。鉄骨において外部に露出する渡り廊下等で温度差による伸び・縮み量は伸縮継手を用いて解決している事が多いと思われます。

 以上のように、鉄骨の製作では、温度変化による伸び・縮み量を考慮して製作に反映する必要は少ないと言えます。

 なお、タイで製作して日本に持ってくる鉄骨は、上記の反対で-2.0mm位になりますが、製作上プラス目に製作すれば現場では特に支障がないようです。

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