建築鉄骨構造技術支援協会(SASST)  
 
Q

2-8 SNからTMCPへ変更など, プレートの鋼種変更は

 設計図のベースプレート詳細にSN490B・PL-45と記載がありました。

 取引先のシャーリング業者に問い合わせたら40mmを超えるとTMCP鋼の在庫しかないとの回答でした。SN490Bのままですと在庫している業者を探すのも大変ですしロール発注するにも納期が掛かりすぎます。

 TMCP325BならSN490Bの代用品になると思いますが、どの様に設計者に話をしたらスムーズに納得してもらえますか。

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A

 SN490材の場合、板厚が40mmを超えると基準強度F値を0.9倍に低減することが、告示2464号で定められています。PL-45の場合、F値を0.9倍に低減すると、断面強度としてはPL-40と殆ど変わらないことになりますので、建築分野でSN490材のPL-45が採用されることは、殆ど無いと思います。

 一方、熱加工制御を行うことにより性能改善を行った材料がTMCP鋼です。TMCP鋼は大臣認定の材料ですが、板厚が40mmを超えても、F値を低減する必要はありません。従ってこの場合SN490B材をTMCP325Bに変更をお願いすることは合理性がありますし、在庫の状況等を考えれば、これしか解決策は無いと思います。

 ベースプレートの鋼種の変更は、「構造耐力上主要な部分」の変更ですので、確認申請書の変更手続きは必要ですが、耐力上安全側への変更であることは明らかですので、「軽微な変更」扱いとなることは間違いないと思います。速やかに、設計者に鋼種変更について説明し、認めてもらうよう働きかけることが必要です。

 ここで重要なことは質問者の質問の主旨が、解決策を提示することではなく、「どの様に設計者に話をしたらスムーズに納得してもらえますか」ということのようです。確かに、「設計者に鋼種変更について説明し、認めてもらうよう働きかける」と書きましたが、説明の仕方を間違えると難しい状況が生じる可能性があります。

 そもそも、このような事態に陥った原因として、「設計者がSN材の場合板厚が40mmを超えると強度を低減しなければならない」ことを見落としていた可能性があります。しかし逆に言えば、説明の仕方を間違えると、設計者のミスあるいは知識不足を突くことにもなりかねませんし、結果として設計者の心証を傷つけることにもなりません。「なぜ在庫が無いことが分かっていたのなら、見積の段階で、指摘しなかったのか」と逆切れされる可能性もあります。従って、質問者の本来の問いかけである「どの様に設計者に話をしたらスムーズに納得してもらえますか」に応えることは実は容易ではありません。

 強いて言うとすれば、精神論にはなりますが、この様な事態をさけるためには、設計者・工事監理者とのコミュニケーションを密にし、何か不都合が起こった際にも、協力して、できる限り迅速に対応できる関係を日頃から構築しておくことが重要と思います。

表1
<TMCP鋼板の特徴 >
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