建築鉄骨構造技術支援協会(SASST)  
 
Q

1-19 主要構造部などの法における定義

 建築基準法の(用語の定義)第2条,五では、下記のように記述されています。

 「主要構造部 壁、柱、床、はり、屋根または階段をいい、建築物の構造上重要でない間仕切り壁、間柱、附け柱、揚げ床、最下階の床、廻り舞台の床、小ばり、ひさし、局部的な小階段、屋外階段その他これらに類する建築物の部分を除くものとする」

 設計で用いる「構造体」の定義と建築基準法の主要構造部との違いを教えて下さい。

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A

 確かに、主要構造部には「基礎」についての記述が無いとか、「最下階の床」が除外されているとか、構造設計者の用いる「構造体」の定義とは少し違和感があります。その理由としては、建築基準法の(用語の定義)第2条,五「主要構造部」は、建築の火災安全性(防耐火)を意識して書かれているからです。基礎は地面下にあるので、火災の影響は及ばない、あるいは「最下階の床」も同様のことが言えると思います。

 建築基準法の体系の中には、もう一箇所「構造体」について記述した条文があります。施行令第1条の三「構造耐力上主要な部分」がそれに該当します。

 「構造耐力上主要な部分 基礎、基礎ぐい、壁、柱、小屋組、土台、斜材(筋かい、方づえ、火打材その他これらに類するものをいう。)、床版、屋根版又は横架材(はり、けたその他これらに類するものをいう。)で、建築物の自重若しくは積載荷重、積雪荷重、風圧、土圧若しくは水圧又は地震その他の震動若しくは衝撃を支えるものをいう。」

 こちらの方が、構造設計者の用いる「構造体」の定義とよく整合しているように思います。

 両者の相違点について少しコメントしておきます。例えば「斜材」については「構造耐力上主要な部分」には記述がありますが、「主要構造部」には明解な記述はありません。軸ブレースについては、水平力のみ負担し鉛直荷重は負担しない場合には、地震と火事は同時には起こらないとの仮定から、軸ブレースの耐火被覆は不要との運用が行われてきました。しかしこれは本当に正しいと言えるでしょうか。通常鉄骨の柱梁に軸ブレースが取り付く場合、鉄は本来熱を伝え易い材料ですから、火災で軸ブレースが高温の火熱にあぶられれば、熱橋により高温の熱がそのまま柱梁に伝わり強度低下を来すかもしれません。最近、自治体によっては、軸ブレースに耐火被覆を求める所もあるようですが、本来はこの問題は建物の安全性の問題であり、法解釈上の問題ではありません。言い方を変えれば、建物の安全性を司る「構造設計者」としては、耐火の問題についても、もう少し真剣に取り組む必要があるように思います。

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